| 高度先進医療の現状 |
特定療養費制度
84年健康保険法改正で発足
混合診療禁止の例外(差額徴収を認める)
1)特別な病室、歯科材料、予約診療、自己都合の時間外受診、紹介無しの特定機能病院初診、治験など
2)特定承認保険医療機関での高度先進医療
高度先進医療の範囲
質的・量的に高水準の医療基盤を有する医療機関において実施される場合にはその安全性及び有効性が確立されているが、その実施については未だ一般に普及するにはいたっていないものであり、当該医療が一般に普及し、保険導入されるまでの間、本制度の対象とする。(承認申請に基づき個別に判断)
厚生大臣は中医協の意見を聴く。このため中医協に専門家会議を置き専門的事項についての検討にあたらせる(これまで85回開催)。
中医協専門家会議による高度先進医療の基準
1)高度先進性
手技又は用具において原理が異なる等既存の技術と明らかに異なった新しいもの、又は既存技術の部分的改善若しくは適応の拡大であってもこれに準じて取り扱うことが適当と判断されるもの。
2)有効性
既存の基準に比して、優れた効果を有する。
3)安全性
期待しえる効果に比して、危険性が小さい。
4)社会的妥当性
実施にあたって、大方の国民の納得が得られる。
5)検討の必要性
保険診療としての有用性について、なお、検討を加える必要がある。
6)除外
既存技術の部分的改善若しくは適応の拡大又は研究開発段階にある技術は対象としない
特定承認保険医療機関
1)大学病院又は研修指定病院
2)特定機能病院
3)厚生大臣が適当と認めた病院で以下の条件を満たす(全ての診療科がなくても可)
300 床以上
高度先進医療担当科において常勤医師5人以上
公的病院又はそれに準ずる病院
1)〜3)に共通して、主たる診療科それぞれの当直体制、看護体制、内部専門委員会が条件
承認申請書類
1)高度先進医療技術の主な内容
2)当該医療機関における実績★
3)当該医療技術に関する文献リスト
4)当該医療に要する費用
5)高度先進医療にかかる費用の積算根拠
6)実施科及び実施体制
7)内部専門委員会の意見
8)その他参考となる資料
★特定機能病院が既に他に承認されている高度先進医療を申請する場合は実績症例が無くても申請を受け付ける。
申請書類の添付文献
1)当該医療技術の内容を論述した論文(実施結果の分析について言及しているもの)
2)当該医療技術の有効性を評価した原著論文
3)当該医療機関における実績に基づく論文又は報告書(実施結果の評価について言及しているもの)
各1編以上
★特定機能病院が既に他に承認されている高度先進医療を申請する場合は文献の添付を省略できる。
高度先進医療の保険適用状況
| 86年改定 | 内視鏡的胆管結石除去術 経皮的尿路結石除去術 経尿道的尿管砕石術 | |
| 88年改定 | 人工膵臓 電磁波による骨電気治療法 マイクロサージェリーを利用した各種血管付自家・複合組織移植 体外衝撃波腎・尿管結石破砕術 モノクローナル 抗体による検査 自己血回収器具を用いた術中自己血回収 | |
| 90年改定 | 埋込型カテーテルアクセス を用いた局所持続動注療法 | 150 点 |
| 脊髄誘発電位測定 | 3,000 点 | |
| 電磁波温熱療法 | (深部9,000 点、浅在性6,000 点、施設基準あり→96年改定で廃止) | |
| 92年改定 | 脳血管内手術 | 22,000点 | 内耳窓閉鎖術 | 19,000点(施設基準あり) | 植込型脳・脊髄刺激装置による難治性疼痛除去 | 18,000点 | 体外衝撃波胆石破砕術 | 20,000点(施設基準あり) | 組織拡張器による再建手術 | 6,600 点 |
| 94年改定 | 補助人工心臓 | (初日30,000点、2日目以降5,000 点、施設基準あり | 骨髄移植(自家末梢血幹細胞、自家造血幹細胞移植) | 25,000点 | 人工内耳埋込術 | 24,900点(施設基準あり) | 胸腔鏡下肺切除術 | 26,800点(施設基準あり→96年改定で廃止) | 開放円盤整位術 | 15,700点 |
| 96年改定 | パルス色素レーザー療法 | 2,100 点 | ルビーレーザー療法 | 2,700 点 | 経尿道的前立腺高温度治療 | 25,000点 | 経尿道的レーザー前立腺切除術 | 23,000点 | 経皮的脳血管形成術 | 16,000点 | 埋込型除細動器移植(交換)術 | 13,600(5,300 )点(施設基準あり) | 血管内超音波法 | 3600点 | ポジトロン断層撮影(15Oガスを用いたもの) | 10,000点 | 胸腔鏡下手術 肺切除術 | (26800 →32200 点、94年4月保険適用済、98年改定で施設基準制廃止) | 交感神経節切除術 | (15800 点) | レーザー鼻内手術 | (鼻と副鼻腔の手術に200 点のレーザー加算 | ガンマナイフによる定位放射線治療 | 70000 万点 | 肝悪性腫瘍マイクロ波凝固法 | 15400 点 |
| 98年改定 | 造血器腫瘍のDNA診断 | 2,000 点 |
| 生体部分肝移植手術 | 採取術33,000点、移植術53,000点(施設基準あり) | |
| 直線加速器による定位放射線治療 | 63,000点 | |
| 2000年改定 | 同種末梢血幹細胞移植術 | 38,000点 |
| 血管内視鏡手術 | 1,700点 | |
| 血球成分除去療法 | 2,000点 | |
| 胸腔鏡下肺悪性腫瘍手術 | 58,000点 | |
| 顕微鏡使用によるてんかん手術 | 55,700点 | |
腹腔鏡下手術
92年改定で胆嚢摘除術に腹腔鏡下手術導入(高度先進医療経ずに) 15,500点
胆石症患者の在院日数33.7日(90年10月)→26.5日(93年10月)
94年4月より以下の腹腔鏡下手術が高度先進医療を経ずに保険適用
鼠経ヘルニア 12800 点
子宮内膜症病巣除去 12900 点
子宮付属器癒着剥離(両側) 13500 点
卵巣部分切除 9400点
子宮付属器腫瘍摘出(両側) 13500 点
子宮外妊娠 13100 点
94年12月、京大泌尿器科が副腎腹腔鏡下手術で高度先進医療承認さる(以後10大学続く)96年改定で腹腔鏡手術一括保険適用
96年改定で保険適用された腹腔鏡手術
食道裂孔ヘルニア (20000 点〔12800 〜15600 点〕)
胃・十二指腸潰瘍穿孔縫縮術 (15800 点〔急性汎発性腹膜炎手術8200点〕)
胃切除 (26800 点〔17800 点〕)
食道下部迷走神経選択的切除術 (21600 点〔12100 〜23700 点※〕)
※胃切除を併施する場合
噴門形成術 (16800 点〔12600 点〕)
胆管切開結石摘出術(胆嚢摘出含むもの22300 点、含まないもの20000 点〔13700 点]
肝嚢胞切開術 (18400 点〔10600 点〕)
脾摘出 (20800 点〔13000 点〕)
腸管癒着剥離 (12200 点〔試験開腹術4400点〕)
小腸切除 (24300 点〔11000 点〕)
虫垂切除 (15000 点 〔6900点〕)
結腸切除 (23700 点〔11500 〜26500 点〕)
腎摘出 (22400 点〔13600 点〕)
副腎摘出 (25800 点〔13300 点〕)
腹腔精巣摘出 (9200点)
膣式子宮全摘 (20100 点〔10600 点〕)
高度先進医療の実績
厚生省保険局医療課調べ
97年7月1日現在、43種類、74医療機関の状況
96年8月1日〜97年7月31日までの1年間の実績 全患者数・・・1,850人
┌特定療養費18億1000万円
総金額約23億4000万円─┤
└患者負担分5億3000万円
保険適用〔98年4月〕前の生体部分肝移植手術の実績
┌特定療養費8億7590万1000円(保険給付額)
総額10億1554万5000円─┤
└患者負担分1億3964万4000円(平均125 万8000円)
その他の高度先進医療の実施状況
神経磁気診断装置による中枢神経機能異常の診断 患者数268 人
┌特定療養費2263万円 総額6581万7000円───┤ └患者負担額4318万7000円(平均16万1000円) 18Fフルオロデオキシグルコース によるPET検査 患者数405 人 ┌特定療養費3億4735万円 総額3億6107万円───┤ └患者負担額1371万円(平均3万4000円) 直線加速器による定位放射線治療 患者数107 人 ┌特定療養費5341万円 総額1億2016万円───┤ └患者負担額6675万円(平均62万4000円) 歯科関係 インプラント義歯 患者数357 人
┌特定療養費3467万円 総額2億1171万円───┤ └患者負担額1億7703万円(平均67万3000円) 顎関節症の補綴学的治療 患者数105 人 ┌特定療養費51万1000万円 総額357万円 ───┤ └患者負担額305万7000円(平均3万円)高度先進医療の現状
中医協診療報酬小委員会
98年12月18日
56種類、174件
過去5年間1件も実施されていない技術が4件、3年間未実施は7件
特定承認保険医療機関であるにもかかわらず高度先進医療を行っていない医療機関が
過去5年間11医療機関、3年間では18医療機関
高度先進医療の検討点
1)承認制の見直し
現行では既承認の技術についても医療機関ごとに承認されねばならない。その普及を図り、迅速な効果測定を行う観点から、たとえば特定機能病院において既承認の技術を実施する場合には届出制にする等、承認を見直す必要はないか?
2)承認要件の見直し
現在、承認要件として申請医療機関における5例以上の実績を求めているが、薬事法で有効性、安全性等が判断されたものについては、こうした実績要件を見直す必要はないか3)現行基準の見直し
現行基準では薬事法上の承認を受けた医療用具等を使用する技術でなければ、高度先進医療の対象としないが、「高度先進性」との関係でどのように考えるか?
高度先進医療の評価ルール
現行では診療報酬改定時に保険適用するか否か効果判定が行なわれている。
これを、一定期間を定め、費用面も含めて、同種の技術と比較して効果測定し・・・
保険適用──┐
選定療養──┤
再評価───┤ をルール化できないか?
削除────┘
現行の専門家会議をこうした効果測定の結果を判断する組織として活用できないか?
現在承認されている技術について整理してはどうか?
治療効果としては同じでも、患者のQOLをあげるといった技術は選定療養として位置づけ、陳腐化してしまった技術は承認を廃止する等の取り扱いはできないか?
虫垂切除手術への腹腔鏡下手術導入シミュレーション
平均在院日数 9.8 日(93年10月患者調査より)
一日当たり入院料(室・看・食・医管等)・・・1218点(93年5月社会医療調査より)A
腹腔鏡下手術導入による手術料の増額・・・・・8100点B
B÷A=6.65日
∴腹腔鏡下手術導入による在院日数の短縮が6.65日以内であれば(全国平均にあてはめれば平均在院日数が3.15日以上であれば)診療報酬の総額は開腹手術の場合よりも増加する高度医療技術の保険導入
| 【ポイント】今回改定で保険導入された高度医療技術の目玉は何といっても腹腔鏡下手術であろう。95年4月より一定基準を満たす医療機関でのみ開腹手術と同じ点数でしか請求できなかったものが、どの医療機関でも、新技術にふさわしい点数が支払われるようになった。ただ入院期間は短縮するので入院料収入が減少する点はマイナスだが、患者サイドからの要望は強く、医療機関は競争上もこの技術をとりいれざるをえなくなるだろう。悪性腫瘍対象の電磁波温熱療法も施設基準が撤廃され、放射線治療と併用という要件も撤廃された。前立腺肥大と皮膚科領域での高度技術も施設制限無しに保険導入されるなど、総じて高度技術に対する積極的な姿勢が感じられる。 |
【虫垂切除術への腹腔鏡導入のシミュレーション】腹腔鏡下手術に関しては、腹部手術で最もポピュラーな虫垂切除術(年間推定実施回数11万回)をとりあげよう。保険導入された腹腔鏡下手術と同種の従来の開腹手術の点数を比較すると手術の種類によってその比は異なるが、虫垂切除術は腹腔鏡下手術に対して開腹手術の倍以上の高い点数が設定されたのが特筆される。
支払側が腹腔鏡下手術に期待するのは在院日数の短縮である。92年から胆嚢摘除術に腹腔鏡下手術が保険導入されたが、その前後で胆石症の患者の平均在院日数は33.7日→26.5日と大幅に短縮している(90年と93年の患者調査より)。むろん胆石症患者の全員が手術を受けたわけではないが、腹腔鏡下手術導入が大いに効果を発揮したのは間違いない。
在院日数が短縮すると、看護料や医学管理料などの入院料収入は当然減る。虫垂炎は平均在院日数が9.8 日と短く、医学管理料も最初の1週間に最も高く設定されていることからこれにより減収も新技術導入にあたって無視することはできない。93年5月レセプトを対象にした社会医療調査によると虫垂炎患者の一日当たり入院料は1218点(現在の点数ではもっと高い)、対して腹腔鏡下手術による手術料の増額は8100点。これは6.65日分の入院料に相当し、これだけの入院料の減少までは手術料の増収で補えることを示している。
虫垂炎の平均在院日数の短さを考えれば、こんなにも短縮するとは考えにくく、手術の実施回数や機器の購入費にもよるが、腹腔鏡下手術の導入はとくに病床の回転率の高い急性期病院にあっては増収に結びつくといってよさそうである。
【パルス色素レーザー療法とルビーレーザー療法】いずれも色素異常や血管腫といった皮膚病変を対象にするものだが、あくまで「単なる美容を目的とした場合は(通達)」保険請求できない。むろん、血管腫は医学的には良性疾患ではあるが、たとえば顔面にある場合など、単なる美容目的ではすまないことはいうまでもない(もしゴルバチェフの血管腫が額よりあと5センチ低いところにあったらソ連書記長になれただろうか)。ルビーレーザー光(波長694.3nm)は皮膚内のメラニン色素だけを熱凝固変性させ、これまで凍結治療や手術などでもきれいに除去できなかった色素性母斑点をきれいに無くすことができる。専ら美容を目的に希望する患者も多いと思われるが、レセプト請求する上では十分な医学的適応があることを写真等でカルテに記録しておいた方がよいかもしれない。高度先進医療の承認を受けないままルビーレーザー療法を実施し、それを他の治療法として振替請求したことで行政処分を受けた例も数年前に発生している。
【前立腺高温度治療とレーザー前立腺切除術】内科的治療が外科的療法にとってかわる傾向のなか、外科的療法の巻き返しが期待できるのが前立腺肥大症の治療であり、レーザー切除術はstageD2 の前立腺癌にも適用が認められている。まぎらわしいことだが、今回保険適用された術式はテレビモニター直視下にレーザー照射を行い患部を切除するものであり、超音波ガイド下に行なわれるものはこれまで通り高度先進医療として承認を受けた医療機関においてしか実施できない。
【高度先進医療をめぐる混乱】大学病院等が高度先進医療の承認を受けるための申請には、一定の実績と膨大なペーパーワークが必要だが、3月に承認を受けた13病院(歯科を除く)のうち10病院までの技術が4月からもう保険適用となった。結果的に、ほんの1か月患者から自費を徴収するために膨大な事務負担を強いられたことになる。3月に高額の自己負担を払って治療を受けた患者のなかには「もう1か月待てば」と後悔する者がいたとしても不思議ではない。皮膚色素異常や前立腺肥大のように緊急を要しない疾患の患者ならなおさらだろう。
これまで、新技術が保険導入された場合も、一定基準を満たした医療機関にのみ「特許」が付与されることが多かったが、今回改定では埋込型除細動器移植術を除いて、どの医療機関でも実施できることになっている。これでは「努力して高度先進医療の承認を受けるより、気長に保険導入を待てばよい」といった風潮を大学病院にはびこらせることにならないだろうか。
腹腔鏡下手術においても、他のほとんどの術式がいきなり保険導入されたのに対して、副腎摘出術のみは高度先進医療のステップをふんで導入された。レーザー鼻内手術も新しい術式として点数表に収載されたのではなく、従来の術式に「レーザー照射を行った場合は200 点の加算」と注を加えたかたちでの導入となった。これでは、レーザー光線そのものは新技術としても、術式までが新技術といえるかどうか疑問になる。
腹腔鏡下手術をめぐっては「見解の相違」から、結果的に多くの振替請求事件を発生させる、という苦い経験を残した。ダイナミック進歩をとげる医療技術と硬直化した医療保険制度とを調和させてゆくことが、高度医療機関の困難な課題となりそうだ。